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【読書】超・格差社会 アメリカの真実(小林由美 著 文春文庫)

 超・格差社会 アメリカの真実(小林由美 著 文春文庫)を読んだ。
 
 2006年に刊行された単行本の内容に、リーマンショックについての章を追加しての文庫版となる。
中身を読む前は、格差社会の負の側面、アメリカ化する日本を批判する内容かと思ったが、
読んでみると寧ろ肯定している節がある(単純な二元論で語られているわけではないが)。
それは恐らく著者の置かれた立場からするとさもありなん、なところではある。
 
 著者はアメリカの階層を「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」
の四階層に分類しているが、著者は上から2番目の「プロフェッショナル階級」に属するはずだ
(自分でそうとは言ってないが、留学中の様子、現在に至るまでの地位を考えれば妥当だと思う)。
さらに著者の就職活動の時期には日本では現在よりも女性が総合職として働きにくかったことも、
アメリカ贔屓な指向の原因じゃないかと思う。

 生活の例も出てくるが、それらは大体、著者の身の回りの人間に関してである。
下層民についてのルポという体ではない。
そういうものを期待していると肩透かしを食うかもしれない。
 
 そういった筆者の立場、というものを念頭に置きつつ読み進めると面白い。
特にアメリカの格差社会の成立の歴史について非常によくまとまっていて圧巻。
また、経済についても難しくなりすぎずに説明してくれる。
モロ理系人間が読んでも珍文漢文ということはなかった。
ただ図が小さくて白黒で読み取りにくかったのは残念かもしれない。
折れ線グラフは特に読み取れない。
 
 裏表紙には、『今日の米国社会の本質を描ききった本書は、明日の日本の姿である』
とは書かれているが、日本の未来についてはほぼ書かれていない。
編集が付けた踊り文句なのか?
本書を読んで日本の将来について考えてみて欲しい、ということだと受け取っておく。
 
全体的には結構面白かった。
 
 
 
 以下、個人的な感想
 
 『アメリカが今も発展し続けられるのは、教育を受けた移民を国外から受け入れ続けているからだ』
と著者は述べているが、これを見てあることに思い当たった。 
日本の高度経済成長だ。
その時期には、農村からの若い労働力の流入があったからこそ日本の成長は成り立った。
現在の日本では単純な労働力自体はほぼ飽和状態だから、単純な労働力としても移民を受け入れても駄目だろうなあ。
そこで高い教育を国外で受けた移民を受け入れる、というのを日本が真似をしても上手くいくかは疑問だけれども。